言うまでもないことだが、「異世界転生モノ」というジャンルが、しばらく前から大流行している。

作品名をここであげつらったら限が無いので逐一書かないが、非常に多数の作品が世に出ていて、アニメ化されたものも多い。

読者受けが良いからなのだろう。

だが、それでいいのだろうか?私は、このジャンルの作品が安易に広まることに、ある種の危惧を感じるのだ。

私が異世界モノで受け入れがたい部分は、「自分を生み出してくれた世界と、その世界で自分を愛し思ってくれる家族、友、恋人らとの絆を捨てる」という部分に対してである。

「自分の意志で転生したのではないから、しかたない。」というような言い訳が出来るかもしれない。しかし、異世界転生モノでは、どの話でも必ず、「転生世界の方が元の世界よりいい」ところが描かれる。例えば、素晴らしい女性(男性)と巡り会えたとか、魔法が使えて素晴らしいとか、最強能力を得たとか、自分の世界で身につけた技術や知識が非常に有利に使えたとか、そんな感じであり、必ずそれらのどれかが描かれている。

だからこそ、転生者達は「異世界で生きる選択」をし、つまり「自分自身の世界を捨てる選択」をしていくのであるが、それは要約すれば、「自分にとって都合のいい世界に来たのだから、元の世界はもう要らない」ということである。

これまでの自分のぱっとしない人生を一転させる仕掛けとして、「異世界転生」という手段はありそうな魔法として魅力的なのだろう。その気持ちは分かる。しかし、上述のような理由で、そのような考えが読者にすんなり受け入れられ異世界モノが流行していることに対して危惧を感じる、ということだ。本当に異世界に転生したとして、都合が良ければ自分自身の世界を捨て去るような人間を、誰がもてはやしてくれるというのだろうか。

もう一つ、異世界転生モノに対して危惧している部分があるのだが、ここでは書かないでおく。

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